親や夫が亡くなったら行う手続き
世帯主が死去したら、家族が行わねばならない手続きが沢山あります。

葬式やお墓の負担を無くす「献体」という制度

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家族が亡くなると、遺族は通夜・お葬式・火葬・お墓への納骨など、様々な事が必要になり相当なお金も掛かります。日本ではお葬式の料金の平均相場は約188万円、お墓の平均費用も196万円が必要だという統計です。近年では、小さなお葬式やイオンのお葬式のような格安葬儀業者も登場しましたが、それでも20万円以上はかかります。

そんな格安葬儀業者よりも更にお葬式を安く節約したい場合に、「献体」という方法があります。献体とは、自分の遺体を大学の医学部に提供して、解剖実習などに利用してもらう事を生前に契約しておく制度です。

献体の大きなメリットとして、遺体後の火葬費用および搬送費用などを大学が負担してくれるという点があります。また身寄りがない場合には、大学側で遺骨を納骨堂に合祀してくれるケースもあります。このように献体は、葬式やお墓の費用負担を大きく軽減出来るのです。

近年は核家族が進んだ事で、身内に金銭的な負担を掛けたくないと考える高齢者は多くなっています。そのため、献体登録を行う人も増加傾向にあり、一部では遺体の保管場所不足から登録待ち状態になっている地域もあるようです。以前は献体登録者も少なく、医学部の実習には身元不明の遺体が使われる事が多かったのですが、現在ではほぼ100%が献体登録者になっています。

献体登録の際は、本人および近親者2人以上の同意が必要となっています。本人が献体を望んでいても、近親者が反対した場合は献体は実行されない事になっています。家族が誰もいない場合は、親しい友人や知人など、死亡時に大学まで連絡してくれる人を遺族の代理とすればOKというところもあります。また、戸籍で天涯孤独が証明出来れば、本人の意思みで献体登録を受け付けている大学もあるとの事です。

一方、献体にはいくつかの注意点もあります。その一つが、大学側が負担してくれるのはあくまで火葬や搬送、大学の納骨堂へ埋葬する費用だけという点です。つまり、普通に通夜やお葬式を行う場合、あるいは通常のお墓へ納骨する場合の費用は、遺族が負担する必要があります。

遺骨の返還時期が不定になるデメリットもある

他の注意点としては、献体は遺骨が遺族に返還されるまでにかなりの時間がかかる事です。一般的に、献体後遺骨が戻ってくるまでは1〜2年程度、長ければ3年以上かかる場合もあります。まず、遺体に防腐処理を施すのに3〜6ヶ月はかかりますし、場合によってはそこから解剖が行われるまでに更に半年以上の時間がかかる事もあります。残された遺族のグリーフケアという観点では、献体はあまり適した制度とはいえないでしょう。

また前述のように、近年は献体登録希望者が増加傾向にあり、順番待ちが発生するケースも少なくないとの事です。こうした事情から、遺骨が返還されるまでに長いタイムラグが発生する可能性があるのです。

ゆえに遺骨を返還してもらい、お葬式やお墓への納骨を行うつもりの人は、注意すべきです。大学に遺体が引き取られる前にお葬式を済ませるという方法もありますが、献体は死後48時間以内の引き取りが望ましいとされています。ですから、事前にお葬式をする時間的な余裕がほとんどありません。つまり献体という制度は、葬式やお墓が要らないという人には適すが、それ以外の人にはデメリットも多い事は認識しておくべきです。

また、死後に自身の肉体を有効活用してもらう方法として、臓器提供もあります。但し、献体と臓器提供はどちらか一方しか出来ない、という点には注意が必要です。

ちなみに、生前大きな病気やケガをした人でも、基本的に献体登録は可能です。医学部での解剖実習では、正常な遺体と比較する事も重要な学習と考えられているためです。ただし、感染症のような重篤な疾患を持っていた場合は、献体登録が出来ない場合もあります。

葬式やお墓の負担を無くす「献体」制度のまとめ
・献体は自身が亡くなった後に遺体を医学部の実習に利用してもらう制度
・献体登録しておけば火葬や搬送の費用(場合によっては埋葬も)大学が負担してくれる
・葬式もお墓も必要ない、という人に向いている制度

このように献体には色々と制約もあるものの、お葬式費用の負担軽減としては非常に有効です。特に身寄りがない人にとっては、最期を迎えるのに最適な方法と言えるかもしれません。ただし、本来献体は医学発展のための制度であって、お葬式を安く済ませられる事が主題ではない事は認識しておくべきです。

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